大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和43年(あ)2600号 決定 1969年5月22日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人守田利弘の上告趣意第一点のうち、判例違反をいう点は、原審相被告人石井が本件交差点に進入したことが違法であるとしても、原判決によれば、被告人は右交差点にさしかかった際、右斜前方三四・四米の地点に既に右交差点に進入して北進中の右石井運転の車両を認めたというのであるから、被告人は、これとの衝突を避けるための措置をとる義務があること勿論であって、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であり、同第二点は、違憲(三六条、三九条違反)をいうが、実質は量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、道路交通法三六条二項、三項にいう「交通整理の行なわれていない交差点」とは、信号機の表示する信号または警察官の手信号等により、「進め」「注意」「止まれ」等の表示による交通規制の行なわれていない交差点をいい、本件交差点のように、一方の道路からの入口に黄色の灯火による点滅信号が作動しており、他方の道路からの入口に赤色の灯火による点滅信号が作動している交差点も、これにあたるものと解するのが相当である。そうすると、これと異なる見地に立って、本件交差点を「交通整理の行なわれていない交差点」ではないとした原判断には法令違反があるが、被告人に、減速徐行して、原審相被告人石井運転の車両の動静に注意し、その通過を待つ等の注意義務があるとした原判決は、結論において相当であり、いまだ刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例